囲碁上達の指針・初段への道筋

はじめに

囲碁は定石、布石、手筋、攻め合い、死活、ヨセ等など、勉強すべき分野が実に広く、それぞれが非常に深みを持っています。

社会人になってから囲碁を始められた方の中には、なかなか上達せず、もどかしい気持ちをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

囲碁に限らず、物事の習得には正しい道筋を歩み、「要領にかなった勉強」(「素人と玄人」影山利郎)を継続して行う必要があります。

時間の限られた社会人の方達が、無駄なく効率よく初段を目指す為の指針を、自身の経験を踏まえてまとめてみました。「要領にかなった勉強」は、人それぞれ考えが違うかもしれませんが、一つの考え方として参考にして頂ければと思います。

囲碁上達の為に習得すべき3つの分野

前述の通り、囲碁は勉強しなければならない分野が非常に多いのですが、大別すると「ヨミの能力」、「定石・定型の知識」、「大局観」の3つの分野に分けることができると思います。

  1. ヨミの能力
    先を読む力、ヨミが囲碁の基本的、かつ最も重要な能力となります。ヨミを深めるための詰碁と、柔軟な発想・飛躍した発想を可能にする手筋が、ヨミの能力を養っていく上で大事な両輪となります。

    ヨミは知識ではなく能力である為、一朝一夕に身に付くものではなく、長期的な訓練によって高めていくものになります。後編で棋力別に読むべき書籍を紹介していきますが、「ヨミの能力」を高める為の詰碁・手筋の問題集に偏重しています。

    初段を目指す段階ではヨミを深めることを重視すべきです。勝敗に直結する能力ですし、将来的に「定石・定型の知識」や「大局観」の醸成に本格的に取り組んでいく上でも、ヨミの力がベースとなります。対局はまさに囲碁の総合力が求められますが、この囲碁の総合力を下支えするのがヨミなのだと思います。

    詰碁が今も昔も囲碁上達法の王道として挙げられるのは当然なのです。

  2. 定石・定型の知識
    布石の段階における定石や、中盤によく現れる定型など、よく起こり得る形はこれまでの研究の成果として最善手が提示されています。自身で最善手を導き出していくのは非常に困難であり、我々アマチュアは研究の成果としての最善手を定石・定型として効率よく学んでいくことが大事です。

    勝敗の行方は、やはり「ヨミの能力」に大きく左右されると思いますが、局面を有利に運んでいく為にも「定石・定型の知識」を積み重ねていく必要があります。これは知識なので、極論すれば一夜漬けで習得が可能なのですが、なかなかそうはいかないですね。この分野も時間をかけて繰り返し学んで身に付けていく必要があります。

  3. 大局観
    局所における優劣だけではなく、盤面全体を睨んだ局面に応じた構想力・大局観も囲碁では重要となります。上記2つの分野と違って、感覚・センスを磨くといった表現が近いかもしれません。

    代表的な勉強方法として棋譜並べが挙げられますが、プロの一手一手の意味・意図を級位者が分かるはずもなく、時間がかかる割には得られるものが少なく、時間が限られている社会人の勉強方法としては非効率のように思います。

    棋譜並べを軽視しているのではなく、自身の置かれたステージによって何に重点を置くべきかを考えた場合、級位者は特にヨミの能力を高めることを優先すべきだと思います。棋譜並べが有益なのは高段者に限られるのではないでしょうか。

    いずれ棋譜並べや棋書を通じて大局観を磨いていくこととして、当面は指導碁やNHK囲碁フォーカス等を通じて効率的に少しずつ大局観を身に付けていくと良いと思います。指導碁の機会を得られた場合、勝敗にこだわらずに3~5子ぐらいの置碁でお願いし、細かい死活や手筋はおいおい自力で習得ができますので、習得が難しい打ち進め方・考え方を中心に指導をお願いするようにすると良いと思います。

    なかなか習得度合が測れない分野かと思いますが、プロの考え方の端緒に触れ続けることが重要なのかもしれません。