【書評】地の日 天の海

地の日 天の海(上) (角川文庫)

地の日 天の海(上) (角川文庫)

徳川三代に仕え黒衣の宰相として知られる天海僧正ですが、若かりし頃のことは会津出身であること、比叡山で修業したこと程度しか知られていません。「地の日 天の海」は、2006年から2007年にかけて日経夕刊に連載され、信長、秀吉、家康、光秀が活躍する戦国の動乱を随風(後の天海僧正)という僧侶の目を通して描いた小説です。

数々の危機を乗り越え、旧体制を打破するかのような革新的な政策の下、天下布武を推し進める信長。その政権下で感情の機微を捉え現実的で明るい秀吉と、生真面目で旧体制の権威を重んじる光秀という対照的な性格の二人が頭角をあらしていくが、やがて光秀は”本能寺の変”へと追いつめられていく...。

隋風との親交を中心に、戦国の世の変転、そして盛衰が、最新の研究成果を踏まえて生き生きと描かれています。

当時、日経夕刊を読む習慣がなかったのですが、この小説を読みたいが為によく購入し、隋風の活躍に興奮したものです。とても楽しみにしていたのですが、中国大返し辺りで突如連載が終了し、機会があれば最初から最後まで読んでみたい手に取った次第です。歴史小説の好きな方に、これまでとは違った視点で楽しめる良書としてお勧めします。